イジワル上司にまるごと愛されてます
 来海が差し出したクリアファイル入りの書類を、柊哉は片手で受け取った。

「ああ、企画書案か。わかった、チェックしておく」
「はい」

 課長席を離れようとした来海を、柊哉が「待って」と呼び止めた。

「はい?」

 来海が首を傾げ、柊哉は小声で言う。

「英語、苦手だって言ってたのに、がんばったな」

 親しげな同期の口調で言われ、来海は頬を染めながら答える。

「え、あー、みんなにあの発音を聞かれてたのかと思うと、今さらながら恥ずかしいんですけど」
「そんなことない。この四年、がんばってたんだってわかるよ。自分を誇りに思っていい。俺もキミを誇りに思う」

 実力を買われて海外に赴任した同期で上司にそんなふうに言われ、来海は照れながら微笑んだ。

「ありがとうございます。でも、おっちょこちょいなところは変わってないと思います。なので、厳し~い目で企画書のチェックをお願いしますね!」
「了解」
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