春は僕らを攫う

教室のドアを開けると馴染みのある顔が揃っていた。
というのもクラス替えは二年生に上がる時だけだからだ。
毎年一からクラス作りよりいいだろう。

自分の席を黒板に貼られていた座席表で確認すると一番前のドア側だ。
最悪だ。一番前なのも嫌だし、何よりドア側だと人の出入りがあって落ち着かない。
一番後ろの窓側だったら最高だったのに。


「よう!」
ドンっと背中を叩かれて振り返ると中学一年生からクラスメイトの杉沢祐樹がいた。
彼は小麦色の肌でいかにもスポーツやってますって感じがする。
実際にサッカー部に所属していて一年の時からレギュラーだって聞いている。
新聞委員会の僕とは対照的なイメージだが性格が合うのか杉沢とはよく行動を一緒にしている。

杉沢は思い出したようにして言った。
「そういえば担任の先生誰か気になるよな。まあたぶん今年も去年と一緒だろうけどさ。」

「でも副担任は異動したから変わるでしょ。」

「副担任とか関わることなさそうだな。」

そんな何気ない話をしながら席に着く。杉沢は黒板に貼ってある座席表確認する。
すると笑いながら僕の後ろの席を指した。どうやら杉沢は僕の後ろの席らしい。


クラスを見渡すとみんなが席に着き始めている。
時計を見ると、もう朝のHRが始まる時間だ。

するとHRのチャイムとともにドアが開く。


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