ヴァンパイア兄弟は奪い合いの真っ最中。
「ねぇ、綾永君はなんで私のこと待っててくれたの?」
歩むペースはいくらかあちらの方が早く、少し小走りになりながら顔を覗き込む。
まだ夕陽になりきらない太陽に照らされた横顔、真っ直ぐ前を見据え私へ視線を移すことはない。
「朝から迷子になってる奴が1人で居たら気になんだろ。」
確かに学校の中の施設や道はあまり理解はしていない。
でも、見ず知らずの私に対して過保護過ぎ無いだろうかと不思議に思う。
「ありがとう…?」
なんて言ったらいいのか分からなくて、小さくなった声でお礼を述べるが疑問符がついてきてしまった。
綾永君はそれ以上喋らず黙々と歩いて行く。
今朝通った校門が見えた頃、突然後ろから声が掛かった。
「綾永。」
自分の名前でなくても反射的に振り返りその姿を瞳に捉える。
その瞬間私は硬直してしまった。
「郁。てめぇまた授業サボってんのかよ。」
綾永君は平然と彼に接するが、私はそれどころではなかった。目の前に現れた男の子が、テレビや雑誌でしか見たことの無い男の子だったからだ。
「えええぇっ!?い、いっくん!?」
思わず声を上擦らせてしまう。
「いっくん」は、私が愛読する雑誌の専属モデルを務める、今話題のカリスマモデルのこと。
柔らかな栗色の髪の毛や、眠たげな瞳が何とも言えない色気を醸し出す。
スタイルも抜群で、いつかのプロフィールで運動は苦手と読んだことがあったが、やはり実物も華奢。
総じて美しかった。
「サボってないよ、休んでるだけ。
綾永、初日から女の子と下校なんて手が早いね。」
私が動揺のあまり口をパクパクさせてるうちに、なんだかんだと2人のやりとりは続く。
雑誌で見かける度、格好良いなぁと一目を置いていたモデルさんが目の前にいる。
まさかの同じ学校っ…!
信じられない…しかも綾永君めちゃくちゃ仲良さそう!?
「ねぇ、君はなんて名前。俺は3年の九条 郁。いっくんじゃなくて、郁って呼んでね。」
興奮と驚きで綾永君の一歩後ろで思考停止してた私に突然声をかけてきた、いっくんこと郁君。
「は、蓮見 琴子です!1年生です!」
あからさまな慌てように郁君はクスクスと笑っている。
「うん。琴子ちゃんね。綾永怖いでしょ?女の子の扱い方下手なんだよね。ごめんね?」
そんな私をからかうように、郁君は綾永君を軽く押し退けて顔を寄せてきた。
ふわっ…と香った郁君の香りは甘くて、蕩けてしまう程優しい匂いだった。
こんな良い匂いする人初めて会った…。さすがカリスマモデル……匂いまでカリスマ…。
普通だったら顔の距離の近さに驚くはずの私は呑気にそんなことを考えている。
頭の片隅で「なんで良い匂いだからって惚けてんの私!」とツッコむ自分もいるのに、なぜか跳ね除けることも一歩引き下がることも出来ない。
あぁなんか……なんとなく気持ち良い気がしてきた…。
「おい!」
だんだん、頭に霧が掛かったように考えることを放棄しそうになっていた私の意識を呼び戻すかのような声に、ハッと目を見開く。
気付けば私と郁君の前に、綾永君が割って入り、私を守るかのような大きな背中があった。
歩むペースはいくらかあちらの方が早く、少し小走りになりながら顔を覗き込む。
まだ夕陽になりきらない太陽に照らされた横顔、真っ直ぐ前を見据え私へ視線を移すことはない。
「朝から迷子になってる奴が1人で居たら気になんだろ。」
確かに学校の中の施設や道はあまり理解はしていない。
でも、見ず知らずの私に対して過保護過ぎ無いだろうかと不思議に思う。
「ありがとう…?」
なんて言ったらいいのか分からなくて、小さくなった声でお礼を述べるが疑問符がついてきてしまった。
綾永君はそれ以上喋らず黙々と歩いて行く。
今朝通った校門が見えた頃、突然後ろから声が掛かった。
「綾永。」
自分の名前でなくても反射的に振り返りその姿を瞳に捉える。
その瞬間私は硬直してしまった。
「郁。てめぇまた授業サボってんのかよ。」
綾永君は平然と彼に接するが、私はそれどころではなかった。目の前に現れた男の子が、テレビや雑誌でしか見たことの無い男の子だったからだ。
「えええぇっ!?い、いっくん!?」
思わず声を上擦らせてしまう。
「いっくん」は、私が愛読する雑誌の専属モデルを務める、今話題のカリスマモデルのこと。
柔らかな栗色の髪の毛や、眠たげな瞳が何とも言えない色気を醸し出す。
スタイルも抜群で、いつかのプロフィールで運動は苦手と読んだことがあったが、やはり実物も華奢。
総じて美しかった。
「サボってないよ、休んでるだけ。
綾永、初日から女の子と下校なんて手が早いね。」
私が動揺のあまり口をパクパクさせてるうちに、なんだかんだと2人のやりとりは続く。
雑誌で見かける度、格好良いなぁと一目を置いていたモデルさんが目の前にいる。
まさかの同じ学校っ…!
信じられない…しかも綾永君めちゃくちゃ仲良さそう!?
「ねぇ、君はなんて名前。俺は3年の九条 郁。いっくんじゃなくて、郁って呼んでね。」
興奮と驚きで綾永君の一歩後ろで思考停止してた私に突然声をかけてきた、いっくんこと郁君。
「は、蓮見 琴子です!1年生です!」
あからさまな慌てように郁君はクスクスと笑っている。
「うん。琴子ちゃんね。綾永怖いでしょ?女の子の扱い方下手なんだよね。ごめんね?」
そんな私をからかうように、郁君は綾永君を軽く押し退けて顔を寄せてきた。
ふわっ…と香った郁君の香りは甘くて、蕩けてしまう程優しい匂いだった。
こんな良い匂いする人初めて会った…。さすがカリスマモデル……匂いまでカリスマ…。
普通だったら顔の距離の近さに驚くはずの私は呑気にそんなことを考えている。
頭の片隅で「なんで良い匂いだからって惚けてんの私!」とツッコむ自分もいるのに、なぜか跳ね除けることも一歩引き下がることも出来ない。
あぁなんか……なんとなく気持ち良い気がしてきた…。
「おい!」
だんだん、頭に霧が掛かったように考えることを放棄しそうになっていた私の意識を呼び戻すかのような声に、ハッと目を見開く。
気付けば私と郁君の前に、綾永君が割って入り、私を守るかのような大きな背中があった。