蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
水岡先輩もその言い方が気に入らなかったようで、ムッとしかめっ面をした。
「このような時間まで彼女を連れまわすことも絶対に止めていただきたい」
「父親や兄に言われるならまだしも、あなたにいったい何の権利があるんですか? それに花澄ちゃんだって子供じゃないんだし、俺と彼女の付き合いに口出ししないでもらえますか?」
「あなたを追い払うために権限など必要ですか? 花澄さんが酒臭い男に迫られているのに、見てみぬふりなどできるわけがないでしょう」
睨み合いながらのふたりのやり取りに口を挟むことも出来ぬままハラハラしていた私へと、中條さんと水岡先輩がほぼ同時に顔を向けてきた。
それぞれの表情から、彼らは私の意見を聞きたがっているのだと察し、短く息を吸い込んだ。
「水岡先輩ごめんなさい。明日も仕事ですし、私はそろそろ家に帰りたいと思います。今度、高校の頃のみんなで会うようなことがあれば、ぜひ私にも声をかけて下さい。楽しみにしていますから」
もともと私は家に帰ると言っていたけれど、この状況でそれを口にするのは、中條さんの側についたような心境になり、水岡先輩に対し申し訳なく思ってしまう。
案の定、顔をあげ見えた水岡先輩の表情は明らかにショックを受けていた。