蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
そう宣言した中條さんの視線が私へと降りてくる。
目と目が合い、私は無意識に息を止めた。
私が考えるのを阻止するように、中條さんの右手が肩に乗り、そのまま一気に顔が近付いてきた。
彼の顔がすぐ目の前にある。
私の唇に触れそうなほど近くに中條さんの唇があって、頭の中が真っ白になっている。
彼の左手が頬に触れ、反射的に身構えた。
キスされるって思った瞬間、緊張で身体が動かなくなる。
それなのに鼓動は一気に高鳴り、身体も熱くなっていく。
どうしようどうしようと頭の中で繰り返すこと十回、私の中に違和感が生まれる。
こんなにも近くにあるというのに、唇はなかなか重なり合わずにいる。
中條さんは私と一センチほどの距離を保ったままでいるのだ。
彼にキスする意思がないのだと分かれば、キスされるとドキドキしまった自分が恥ずかしくてたまらなくなり、怒りが込み上げてくる。
「……なんのつもりですか」
「少し口を閉じていてください」
小声でやり取りをしながら睨みつければ、また彼はにやりと笑い、振り返る形で水岡先輩と向き合った。
「俺と彼女はこういう関係なので、口を出させていただきました。ご理解いただけましたでしょうか?」