蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
逆に手を掴み直され、ぐっと引き寄せられてしまった。
中條さんの胸元へと倒れ込む形になった私の肩をしっかりと抱き寄せながら、彼が水岡先輩へと言葉をかけた。
「そういうことですので、彼女は連れて行きます。失礼します」
恭しく頭を下げてから、中條さんは私の身体ごと回れ右をし歩き出した。
駅とは逆方向に歩き出したため、「中條さん」と呼びかけようとすれば、彼がちらりと私を見た。
「途中で花澄さんを置き去りになどしませんので、安心してください。責任もって家まで送ります」
私がタクシーで帰りたいと文句を言ったところで、彼は自分の意見を譲らないだろう。
「……よろしくお願いします」
自分たちが奏でている不揃いな靴音に耳を傾けながら、私は小さくため息をついたのだった。