蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
この違いを不思議に思いながら、私は運転中の中條さんの横顔をちらりと盗み見する。
彼とはなんだかんだ言って長い付き合いだ。
厳しい言葉にへこんでばかりで、自分にとって目の上のたんこぶみたいな存在だと思っていたけれど、知らず知らずに違う感情も培っていたのかもしれない。
信頼という言葉が一番近いだろうか……それとも、もっと別な……。
突然彼がこちらを見たことで目と目がしっかりと合ってしまい、一瞬の遅れをとりつつも、私は勢いよく顔を前方へと向け、目をぎゅっと閉じた。
「顔真っ赤ですよ。お酒もほどほどに」
中條さんから指摘され、余計に顔が熱くなっていく。
お酒ももちろん入っているけれど、顔が赤い理由はそれだけではない。
彼に顔を見られたくなくて、私は目を閉じたまま少しずつ顔を助手席側の窓の方へむけていく。
顔の熱と胸の鼓動がおさまるまで、しばらく寝たふりをしていよう。
そう決めて、私は大きく息を吐き出した。
車内に心地よく流れる音楽と、それを邪魔しないくらい静かなエンジン音。
社内はとても快適で、まるでゆりかごの中にいるかのような気持ちにさせられていく。
平常心を取り戻すべく目を閉じていたのだけれど、次第に眠気との戦いへと移り変わってしまった。