蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
「私も一番好き! 美味しいよね! うちの人気メニューだし、リピーターだってとっても多いんだよ」
パスタを運んできてくれた女性が、ほほ笑みながら私の意見に同調してくれた。
その一言だけで、私はお兄ちゃんとの口喧嘩に勝てる気になってしまう。
優しいだけでなく、上品さを漂わせた美人のこの女性こそが、お兄ちゃんの恋人の麻莉さんなのである。
「私もけっこうな頻度で食べててるから、遼が見飽きちゃったのはそのせいでもあるかも」
「確かに、ふたりでそればっかりだな」
麻莉さん大好きのお兄ちゃんのことだ。
彼女が好きだと言っているのに、見飽きたからあまり食べるななんていうひどいことは、もう二度と口にしないだろう。
今日も変わらず美味しいパスタを頬張っていると、他のお客さんから呼ばれた麻莉さんは「ごゆっくり」と私たちに一言残し足早にテーブルを離れていった。
その後ろ姿をぼんやり見つめながら口元をナプキンで拭ったあと、私は思ったことを言葉にする。
「麻莉さん、いつ見ても綺麗で素敵。私も麻莉さんみたいな女性になりたいなぁ」
「お前、それもいつも言ってるな」
「しょうがないじゃない。学生の頃から麻莉さんは私の憧れの女性だったんだから」