蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~

中條さんは腕時計で時間を確認し、「あぁ。もうダメですね」と呟いた。


「実は食事の後に一緒にタワーにのぼろうとも考えていたのですが、営業時間が終わってしまいました」


慌ててスマホで時刻を確認すると、時刻は午後十時を過ぎたところだった。

タワーにのぼれるのは十時までだったのかと推測すれば、残念な気持ちが膨らんでいく。


「そうだったんですね、ごめんなさい。私が追加でケーキを注文したから」


食べたいなら我慢せずどうぞという言葉に甘え頼んでしまったことをちょっぴり後悔しながら食べかけのケーキを見つめると、中條さんが苦笑いする。


「いえ。ケーキのせいでも花澄さんのせいでもありませんよ。しいて言えば、俺があなたとの話が楽しくて時間を忘れてしまったのが原因です」


ドキリとするような言葉と共に、中條さんが柔らかく目を細めて微笑みかけてくる。


「……あの、中條さん……でしたら、今度……よかったら一緒に」


友達にするみたいに軽く誘えばいいのに、緊張でうまく言葉が紡げない。

たどたどしくなってしまったことに気まずさを覚えていると、私に向かって中條さんが頷きかけてきた。


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