蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
「えぇ。また日を改めて、必ず」
短くも力強さを感じる彼からの返事に、一気に気持ちが舞い上がっていく。堪えようとしても、口元が笑ってしまう。
「でも、聞きたかったことは先延ばしにしませんよ。花澄さん、あなたの今の考えを俺に聞かせてください」
今までの穏やかな時間は罠だったのかと思ってしまうほど、無防備だった私の心に中條さんが踏み込んできた。
「正直……迷っています」
真剣な眼差しにほんの少しの息苦しさを覚えながら、私は自分の気持ちを言葉に変えていく。
「彼とお付き合いするかどうかをですか?」
「えっ!? ちっ、違います! そっちは全然迷ってません。私は水岡先輩と付き合うつもりはありません。だって……」
ハッとし、私は黙り込む。
たった今自分が言おうとした言葉に、驚きと戸惑いでいっぱいになる。
確かに最近、私は中條さんのことを意識している。
彼が車で迎えに来てくれた時、好意と呼べるような温かな感情が自分の中にあるのを感じた。
けれどそれは、友情や信頼に近い感情かと思っていたけれど……もしかしたらそれよりももっと、熱くて甘い感情なのかもしれない。