蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
しかめっ面でそう断言してから、中條さんはテーブル上で両手の指を組み、冷静さを取り戻した瞳で私をじっと見つめてきた。
「今の場所でもあなたは輝いていらっしゃいます。もちろん望めば、違う場所でも輝くことができるでしょう。花澄さん自身はどの場所でどのように輝きたいのですか? 今一度考えた方がよろしいかと思います」
「……はい。もう少し考えてみます」
中條さんがくれた言葉が心に強く響いている。
どのような場所でどのように輝きたいのか。その答えなら、きっとすぐに見つけることが出来るような気がした。
「中條さん、親身になって話を聞いてくれてありがとうございます」
「そりゃ親身にもなりますよ。私もあなたがいなくなってしまうことに耐えられない社員のひとりですから」
真剣な面持ちを崩さずそんなことを言う中條さんに、私は冷静でいられなくなる。鼓動が早まり、頬もひどく熱くなっていく。
「最後まで全力で引き止めさせていただきますが、俺はこれからもずっと花澄さんの味方のひとりでありたいと思っていますから、あなたがどのような答えを出したとしても、応援させていただきます」
「……中條さん」
嬉しく思う反面、ずるいとも思ってしまった。
そんなことを言われたら、好意を持ってくれているのかもと期待してしまう。
社長の娘ではなく副社長の妹でもなく一人の女として、中條さんは私のことをどう思っているのだろうか。
……知りたい。
彼の心に一歩踏み込む勇気もないくせに、自分の中にある甘くてもろい感情がもどかしくてたまらなかった。