蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
自分の気持ちを先輩に上手く伝えることが出来るだろうか。
どんな風に言えば、気を悪くさせずに済むだろうか。
気持ちが重くなっていくのを感じながらロッカールームを出ると、退社する人々の流れに逆らうようにこちらに向かって歩いてくる中條さんの姿を見つけた。
声をかけたいと思ったけれど、彼は手に持っている書類へと俯きがちに歩いているため、話しかけて良いものか躊躇ってしまう。
しかし、私を後ろから追い越していった女性社員たちが、「中條さん!」とその名を呼びながらあっという間に彼を取り囲んでいく。
今から水岡先輩の所に断りに行ってくると一言言いたかったのに、さっき以上に話しかけ辛い状況となってしまった。
報告は明日にしようと決めたその瞬間、中條さんと目が合った。
軽く会釈をしながら彼の横を通り過ぎようとしたけれど、女性社員を押しのけ出てきた中條さんに腕を掴まれてしまった。
ぱっと見はいつも通りの仏頂面なのに、なぜか私には彼が焦っているように見えてしまって思わず首を傾げてしまう。
「……なっ、中條さん、どうしました?」
「いえ……その……何か思い詰めているように見えたので、つい」