蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
その言葉にきゅっと胸が苦しくなる。
「実は……」と話を聞いてもらいたくもなるけれど、彼の周りにいる女性社員たちから不躾な視線を向けられているこの状態では何も言いたくない。
「倉渕さんどうかしたの? 心配事でもあるの?」
中條さんの周りにいる女性社員のひとりが問いかけてくる。
言葉だけ聞けば心配してくれていると思ってしまうけれど、実際は違うということは彼女の表情を見ればわかる。
私が暗い顔をし中條さんの気を引いたと決めつけているかのように、彼女はムッとした顔でこちらを見つめている。
「いえ。特になにも」
小刻みに首を横に振って、私はそっと身を引いた。
「……そうですか。引き止めてしまってすみませんでした」
私の腕を掴んでいた中條さんの手も離れていく。
「お先に失礼します」
中條さんたちに軽く頭を下げて歩き出す。
すぐに後ろから女性たちのはしゃぐ声が聞こえてきて……後ろ髪を引かれ後ろを振り返ると、再び目が合ってしまった。
自分を取り囲む女性たちのテンションの高い声音などまったく聞こえていないような様子で、中條さんが私を見つめている。