蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
言葉はなくても、その瞳から心配してくれているのが伝わってきて、胸が熱くなっていく。
私は自然と笑みを浮かべていた。
もう一度頭をさげてから、彼に背を向け、足早に社を出たのだった。
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「花澄ちゃん! ごめん待たせたね!」
走り寄ってくる水岡先輩の姿を見つけ、私は持っていたスマホをバッグの中へとしまい、先輩へと身体を向けた。
「いえ。大丈夫です。私もさっき着いたばかりですから」
ゆるりと首を横にふると、水岡先輩がほっとした様子で前髪をかきあげた。
しかしその場から動こうとしない私に気付いた途端、気まずそうに表情を強張らせる。
「店の中で待っていてくれても良かったのに」
「いえ。ここで良いです」
答えながら私は背後を振り返り見る。
水岡先輩との待ち合わせ場所になったのは、この前彼と食事をしたレストランだった。
会う約束をしたとき、レストランの中で待っていてと言われたのだけれど、これから話さなくてはいけない内容を思えば、食事をしながらという気持ちにもなれず、私は外で待っていたのだ。