蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
「そっか……ってことはやっぱり、俺の欲しい返事はもらえないってことなのかな」
「先輩に誘ってもらえてとても嬉しかったのですが……」
「だったら考え直して」
「ごめんなさい! 私は今の仕事が好きなんです。だからあの場所でもっと輝けるように頑張りたいと思います」
自分の思いをはっきり言い切ると、水岡先輩が今度は苛立ちと焦りを感じている顔で前髪をくしゃりとかきあげる。
「水岡先輩、本当にごめんなさい」
気持ちにこたえられないことが申し訳なくて謝罪の言葉を口にすると、彼はため息をひとつ吐いたのち、鬼気迫る様子で私に大きく一歩近づいてきた。
恐怖を覚え、自然と足が半歩後退する。
「もう一つの方は? 一緒に働くのがダメでも、恋人として傍にいてもらえたらすごく嬉しい」
「……えっ……それも、ごめんなさい」
二回も断らなくてはいけなくなってしまったため、呻きながらの返答となってしまう。
私が迷っていたのは水岡先輩の会社で働くかどうかということだけで、付き合うかどうかに関しての答えは考えるまでもなく最初から決まっていた。
そのことが私の返答から伝わってしまったのか、先輩が不愉快そうに表情を歪めた。