蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
ちょっぴり上から目線で、なおかつ大きな顔で言葉を返すと、中條さんが口角を上昇させる。
頬に触れていた彼の手が、膝の上にあった私の手を掴み上げた。
「心より感謝申し上げます」
中條さんは軽く持ち上げた私の手の甲に自分の口を近づけ、上目遣いでにやりと笑いかけてくる。
向けられた眼差しから色香を感じ取ってしまえば、近付いても触れはしない彼の唇の柔らかさを想像してしまい、恥ずかしくたまらなくなっていく。
慌てて私は自分の手を引き戻した。
「や、や、やっぱりだめです! 許可できません!」
「なぜですか?」
「……どうしてもです!」
恥ずかしいだけでなく、自分ばかりがどきどきしていることを思えば、悔しさも大きくなっていく。
「残念ですが、一度許可した時点で、取り消しはききません」
「でも中條さん……っ!」
中條さんの手に優しく頭を撫でられ、言葉が途切れてしまった。
私をじっと見つめる澄んだ彼の瞳から目を逸らせないでいると、彼の手が私の頬に添うようにそっと触れてきた。
「今日は俺の彼女でいていただきます。諦めてください」
声の甘さや言葉の余韻がくすぐったくて、彼の触れている場所が熱くなっていく。