蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~

私にとって兄の隣に彼がいることは当たり前のことで、いなくなるなんて考えられない。


「本当に付き合っていませんし、これからもないですね。すべてが好みじゃないので……それに中佐都建設はとても優れた会社ですが、俺はもっと素晴らしい会社を知っていますので、そちらに移りたいとも思いません」


もっと素晴らしい会社。それはもしかして、倉渕物産のことを言っているのだろうか。

今度は期待を膨らませて、じっと佳一郎さんを見つめていると、彼が私の頭に手を乗せた。


「倉渕物産を離れたくありません。社長も副社長も魅力あふれる人物ですし、花澄さんも……」


ふつりとそこで言葉を切られ、私は拳を握りしめる。


「わ、私も?」


続きを促すように問いかければ、涼しげな眼差しが返ってくる。


「なかなかです」

「なっ、なかなかって……もっと、違う言葉で……わかりやすくっ……」


曖昧な表現を、どう捉えるべきかモヤモヤしてしまう。


「そこそこです」

「そこそこ!? 程度が下がりましたよね。出来れば私も魅力的とか素晴らしいとか、具体的に褒めてもらいたいです」

「嫌です」


あっさりと拒否されてしまい、私はよろよろと佳一郎さんから距離を置く。


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