蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~


「私、褒められるて伸びるタイプなんですけど」


わざとらしくふて腐れてみせると、そっと腕をつかみ取られた。

彼の手によって軽く引き寄せられ、佳一郎さんの胸元に額をぶつける。

慌てて身体を離そうとしたけれど、後頭部に添えられた彼の大きな手が、そうさせてくれなかった。

私は佳一郎さんの胸元に顔を埋めたような格好のまま、動けなくなる。


「見える所にいてくだされば……こうして俺のそばにいてくれさえすれば、これから何回でも褒めてあげますよ。褒めるだけでなく、たっぷり甘やかしても差し上げます」


じわりと胸が熱くなっていく。ゆっくりと顔をあげれば、すぐに視線が繋がった。

彼の瞳が切なげに揺れたように思え、どこにも行くなと言われたような気持ちになっていく。

包み隠さず話すと言ったけれど、車内だけでなく食事中も、佳一郎さんは私に何も聞いてこなかった。

もしかしたら私が自分で話し出すのを待っていたのかもしれないと思えば、なかなか話し出す切っ掛けが掴めずにいたことを申し訳なく思ってしまう。

見つめ合い数秒後、佳一郎さんが柔らかく微笑んだ。


「先に進みましょう」


言いながら、彼は私の手を掴み、歩き出す。


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