蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
佳一郎さんと手を繋いで歩いていると、まるで夢の中にいるみたいだ。
彼と一緒だったらこのままどこまでも行けそうな気がした。
目の前を行く佳一郎さんの大きな背中を惚けたまま見つめていると、彼が足を止めた。
そのまま手を引かれ私は彼の隣に並び、「わあっ」と感激の声を上げる。
煌びやかな夜景が、どこまでも広がっている。
知っている場所や建物を見つけては楽しくなり、ふたり身を寄せ合っては、倉渕物産はあのあたりだよねと指をさした。
「とっても綺麗ですね」
改めて感じた高さに少しだけ足が竦み、隣りに立っている佳一郎さんの腕をぎゅっと掴んだ。
佳一郎さんはそんな私に苦笑いをしてから、視線を前に戻した。
手すりに両腕乗せ、少し身を屈めた状態のまま、静かに夜景を見つめている。
私は整った横顔から窓の向こうへとゆっくりと目を向け、両手で手すりを掴んだ。
「……私、さっき水岡先輩と会ったんです」
佳一郎さんが言葉に反応したのを感じ取るけど、私は彼を見れず、夜景に視線をとどめたまま話を続けた。
「断りました。やっぱり私は倉渕物産が好きだから、これからも倉渕物産の可憐な花で居続けたいと思います!」