蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
「佳一郎さんは私をどんなふうに見ているの? あなたにとって私はどんな存在?」
彼の心の中に踏み込むことがこんなにも恐くて仕方ないというのに、聞かずにいることもできなかった。
戸惑っているような声で、佳一郎さんが「花澄さん」と私の名前を口にする。
何でも包み隠さず教えてくれると言ったあの言葉を信じて、彼の心の中へともう一歩踏み込んでいく。
「優しくしてくれるのは私が社長の娘だから? それとも……」
佳一郎さんの顔が近付いてきたことと額に感じた甘い熱に、一際大きく鼓動が跳ねた。
「あなたを愛しく思っています」
そして優しく紡がれた言葉に、何も考えられなくなっていく。
「俺にとってあなたは全てであり、唯一の存在です。他の誰も、あなたの代わりにはなれません」
嬉しくて、温かい涙が一気にこぼれ落ちていく。
涙声で「佳一郎さん」と繰り返すと、彼が頬を伝う涙を指先でそっと拭ってくれた。
「まったくあの男は、花澄さんにくだらないことを吹き込んだようですね」
呆れたように言ったすぐ後、彼は笑みを浮かべ、すぐに「失礼」と表情を戻す。
「怒りを覚える反面、あなたが倉渕物産を辞めないと分かり、嬉しくて仕方ありません」