視線 ~人生が変わる瞬間~

 あぁ、今年もかぁ…。


 不満を何とか飲み込んで、私は小さくうなずいたのだった。



 転校先は、特徴的な高校だった。


 今は5月。


 ちょうど受験シーズンが過ぎたところで、私は高校1年生
なのにテストを受ける事なく入学できた。


 普通はもっと面倒くさいものだと思ってたけど、この高校はそうでもないらしい。


 そんなわけで学校にはすんなり入学できたのだが、私はこの後の一番最初の難関でつまずいてしまう事になる。


 問題なのが、自己紹介だ。


 この学校には、私の知っている人は一人もいない。


 入学した時期は周りと比べて一ヶ月しか変わらないのに、転校生としてみんなの前で自己紹介しないといけない。


 私はチャイムが鳴ると同時に、担任の先生と教室に入った。


「織坂 愛羅です。短い間ですがよろしくお願いします」


 私は、ここであえて「短い間」という言葉を使った。


 どうせ一年経てば、またこの学校を去るのだから。
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