君に会いたくて


「あたし、直樹くんが……」
「紗枝ちゃん、なにか飲む?」



紗枝の言葉の続きを、無理やり遮る。


そんな俺を見て、紗枝は言葉を失っていた。



「なにか、飲み物もってくるよ」



スッと立ち上がり、背を向けた俺に、紗枝は小さな声で言った。



「……お水が飲みたい」



紗枝の方を見ることもできなくて。


俺は振り返りもせずに、わざとらしい、明るい声で言った。



「りょーかいっ」


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