君に会いたくて


ぱたりと、静かに部屋のドアを閉めた瞬間。


突然、全身の力が抜けてしまって、俺はその場に座り込んだ。



『あたし、直樹くんが……』



もしかしたら、その続きはなんの意味ももたないものだったかもしれない。

俺の早とちりかもしれない。



――でも……。



紗枝の思いつめたような表情。


理由もなしに、メールしてと言った言葉。



違う、そんなはずがない。


言い聞かせながらも、亮太を裏切る一歩手前まで来ているのかもしれない。

そう思わずにはいられなかった。


< 109 / 157 >

この作品をシェア

pagetop