君に会いたくて


濡れていた紗枝の髪の毛は乾いていて。

俺が渡したミネラルウォーターのボトルは、すっかり空になっていた。




「お水、ありがとう」



空になったボトルを握る紗枝の小さな右手。


その右手のくすり指に、俺の視線は奪われた。



部屋の灯りに照らされて、キラキラと光るシルバーの指輪。


本物なのかイミテーションなのか、ダイヤのような小さな石がついていた。




「あたし、もう寝るね」



他人の家で迎えたクリスマス。

余韻に浸る暇もなく、紗枝はスッと立ち上がった。


< 117 / 157 >

この作品をシェア

pagetop