君に会いたくて


部屋のドアを閉めてから、おふくろの部屋に行くまでのあいだ。


俺と紗枝の間に会話はなかった。



一階にあるおふくろの部屋。


階段を下りている途中で、紗枝の足がぴたりと止まるのを背中で感じた。




「……どうした?」




振り返って聞く俺に、紗枝はうつむいたままだった。




「……紗枝ちゃん?」




もう一度、声をかける。


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