君に会いたくて
飛び込むように家に入り、玄関に置き去りにされたままのスポーツバッグを手に取る。
慌てて、一歩外に出た瞬間。
深い溜息が出た。
今からまた、猛ダッシュでバス停に戻ったって、意味ないじゃん。
次のバスまでは、まだ時間もあるし……。
いいや。
ゆっくり行こう。
朝、こんなにのんびりとバス停に向かうのは本当に久しぶりだ。
いつもいつも、紗枝に会いたくて。
亮太が来るまでの数分間。
紗枝と二人きりの時間を壊されたくなくて、俺はいつも走っていた。