君に会いたくて


でもさ……。

俺には分かったんだ。


紗枝がいま、どういう状況なのか。


もしかしたら亮太もちゃんと分かっていて。

わずかな望みをかけて、お母さんにそう聞いたのかもしれない。



普通さ?


ICUに運ばれた人って、人工呼吸器のマスクみたいなもんがついているだろう?



心電図がピッピッと音を立てて、生きていることを知らせてくれるだろう?



紗枝には、そのどちらもなかったんだ。


そして、紗枝の周りにいた看護師さんたちが、ベッドの周囲を片付けていたんだ。



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