君に会いたくて


紗枝が息を引き取ったその日に通夜が行われた。


行くつもりもなかった俺は、部屋に閉じこもり、ベッドの上にだらしなく横たわっていた。



枕元に無造作に置かれた携帯。


無心でメールをひらく。



紗枝と最初で最後だった、あの弁当のメール。


紗枝がこの携帯を鳴らしたのは、あのときだけだった。




今朝、もしも俺がジャージを忘れなかったら。

取りに行かずに、制服のまま体育の授業を受けようと諦めていれば。



きっと、なにかが違っていたんだ――。


< 140 / 157 >

この作品をシェア

pagetop