君に会いたくて


「……それでさ、購買のおにぎりが昆布しかなかったんだよ」


「昆布ってさ、いっつも売れ残るよねー。あたしの学校でもそうだよ」



バスを待っているあいだ、二人の会話が嫌でも耳に入ってくる。



一緒に帰るのを拒むことだってできたのに。

それでも、こんなに苦しい想いを抱えながら一緒に帰る理由はたったひとつ。



紗枝と一緒にいたかったから。

俺には、会いたいと思った時に、紗枝と会うことなんかできなかったから。


わずかなチャンスさえも逃したくなかったんだ。



「あぁ、そういやさ。直樹、今日、告られたんだぜ」


「えぇー、本当!?」



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