君に会いたくて
バスに乗る流れを止めてしまっていたことに、ようやく気づく。
順番待ちの乗客が、「早く乗れよ」と言わんばかりにうんざりした顔で俺を見ていた。
「すみません」
軽く頭を下げたあと、俺はバスに乗る。
一番うしろの席では、紗枝と亮太が身体を密着させて座り、親しげに話している。
「……あれ? 直樹くん?」
「俺、音楽聴きたいから前の席に座るわ」
亜紀ちゃんにそう言って、俺は運転席の後ろの席へと向かう。
そして、朝と同じようにipodを取り出すとヘッドフォンを耳にあて音楽を聴いた。