君に会いたくて
弁当箱を返そうと、放課後、俺はわらびの駅前で紗枝を待った。
夕暮れどきの駅。
帰宅の途に着く人たちで、朝と同じように駅は混雑している。
冬のはじめの冷たい風が吹きぬけ、身震いしながら緩んだマフラーを巻き直す。
「……あれっ、直樹くん?」
学校指定のベージュのコートを着た紗枝が、驚いた声をあげながら近づいてきた。
「どうしたの? 誰かと待ち合わせ?」
いつも一緒にいる亜紀ちゃんの姿はそこにはなく、珍しく紗枝ひとりだった。