君に会いたくて


うつむいて、「気のせいだろ?」とボソボソと呟くようにして言う。



「ふうん」



紗枝は、疑うような口調でそう言ったきり、何も突っ込むことはしなかった。



女が苦手なわけじゃない。

同じクラスの女子とは普通に喋れているし。

軽いスキンシップだってする。



紗枝ともそんなふうに接したいのに。

もっと打ち解けて、ふざけあったり、バカな話でもして弾けたいのに。



紗枝といると、いっつもドキドキして。

つい、無口な男になってしまうんだ。



< 9 / 157 >

この作品をシェア

pagetop