先生。
自己紹介の時間。
幸いにも、順番は回ってこなかった。
一安心して、息をつく。
一時間目は物理基礎。
理数系が大嫌いな私は苦い気持ちになる。
最初の授業だからか、単なる授業の説明と持ち物の話で一時間は終わった。
二時間目は数学A 。
二時間連続苦手教科だなんて、これからの勉強が心配になる。
思えば、この頃はまだ彼に少しばかりも興味はなかった。
新学期最初の授業であるのに、先生が生徒に与えた印象は暗いものであった。
『名前は、小林由人です。まぁ、僕は暗い人間なので、面白い話とかできないです。』
こんな内容を、マスクと眼鏡で完璧に顔を隠している先生に言われてしまうと、“危険人物”のようなレッテルを生徒にはられても仕方ないと思う。
『クライミングが趣味です。なので腕が閉まりません。』
先生の話は、暗いなりに面白かった。
そして、眼鏡越しに見えた目は、温かくて、優しかった。
小林由人。
のちに、彼は、私の高校生活を変えた。
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