クールすぎる藤堂くんが本気になるなんて!?
───キャーー!!!


そう強く強く決意したばかりの私に聞こえてきたのは、女の子達の甘ったるさを存分に含んだ黄色い声。


一瞬で嫌な予感に包まれながら、教室の入口へと視線を向ける。

も、もしかして……藤堂くん!?
本当に本当に来ちゃったりする!?


いや、待て待て。
落ち着け、杏。

相手は学園の王子様なんて呼ばれてるあの藤堂くんだよ?


取り巻く女子達に渾身の塩対応をお見舞するようなクール男子、藤堂くんだよ?


いくら『毎日会いに行く』と言われたとは言え、こんな朝イチで、しかもバケツの水をぶっかけるような女なんかに会いに来るほど暇じゃないはずだ。


そう自分に言い聞かせて、冷静を装うけれど、こんなにも女子が色めき立っている今、理由なんて藤堂くん以外に見つからない。


「藤堂くん、おはよ!」

「今日もかっこいい〜♡」

「朝から見られるなんてツイてる〜!」




そして、やっぱり予想は的中してしまった。




2組の教室の入口でクラスメイトの女子たちに囲まれながらも笑顔ひとつ零さない藤堂くんは、


教室の中を少しだけ見渡して、それから


「杏」


私を見つけて、少しだけ嬉しそうに笑った。
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