クールすぎる藤堂くんが本気になるなんて!?
勢いよくリュックの中から財布を取り出した私は、嫌がる足にムチを打って歩き出す。


無駄に整った顔は相変わらず崩れることを知らなくて。こんなにイケメンが私を訪ねてきたっていうのに、微塵も心が踊らないのはなぜだろう。


「藤堂くん。
これ、クリーニング代!」


教室の入口までたどり着いた私は、開口一番にそれだけ告げて財布の中から千円札を3枚引っこ抜いて差し出した。


なんせ、私はただの凡人学生……。
手持ちはこれが精一杯。


藤堂財閥はどこの高級クリーニング店と契約してるのか分からないけど、今の私にはこれ以上の大金は出せないわけで……。


これで身を引いてくれなかったらどうしよう、と中々受け取ってくれない藤堂くんに焦り始めたとき、



「んなもんいらねぇよ。
水かけられたこと気にして会いに来たわけじゃねぇし」


「……で、でも」



気づけば私が差し出した手ごと、藤堂くんの大きな手に握りしめられていて、私の手からはゆっくりと力が抜けて行く。


「ちょ、手離して」


体がどんどん熱を持っていく。


極めて冷静に振舞ってるけど、本当は心臓バックバクだし、クラス中の注目の的だし、恥ずかしくて顔から火が出そう。
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