クールすぎる藤堂くんが本気になるなんて!?
「じゃ、約束通りそのバケツ、今日は杏が片付けてよね」
「え!」
雑巾を握りしめたままの私を振り向いて、柚子はニッと悪魔のごとく微笑んでいる。
や、約束……!?
「昨日、自分で言ったじゃない。
"明日は私がやるから、今日の片付けは柚子お願い!"って。
なに?あれは嘘だったの?」
───!!!
柚子の言葉に昨日の出来事が瞬時にフラッシュバックする。
ぐっ……た、確かに言ったぁ。
私、昨日も猛烈に暑さにやられてて、バケツの後片付けを柚子に押し付けて急いで自販機に向かったんだった。
そう、"明日は私がやるから"って交換条件まで提示して。
「そ、そうでした……。つい、暑さで記憶が」
「分かればいいのよ。
じゃあ、明日からは2人でやるってことで。
今日は"ソレ"、杏に任せるからよろしく」
"ソレ"と言いながらバケツを指さした柚子は、満面の笑みでヒラヒラと私に手を振ると、長い髪をなびかせて教室へと去っていく。