クールすぎる藤堂くんが本気になるなんて!?
「柚子ちんの薄情者〜」
取り残されたバケツと私。
どこにでもあるプラスチックの青いバケツの中に、雑巾はたったの2枚。
そんな雑巾とは反対に水はバケツの8分目まで入っていて、持つ前からその重さにうんざりしてくる。
廊下掃除担当の私の横を、掃除を終えたらしい生徒達がぞろぞろと教室に向かって流れていくのを横目に、
眺めてたって勝手に片付いてくれるわけもないバケツの持ち手へと手を伸ばした私は、今、心底憂鬱な気分。
きっと、この校内で1番憂鬱な自信があるよ。
「よし……!
さっさと片付けてジュース買いに行こ!」
そんな憂鬱な気分を吹き飛ばすべく、何とか自分で自分に気合を入れて、勢い良く立ち上がった私は、
「わっ!!」
あろう事か、バケツの重みでバランスを崩し、
そのままグラッと世界が傾いた……。
───ドンッ
───バシャッ
「つっめて……」
何かとぶつかった衝撃に顔を歪めれば、すぐ側から聞こえてきた低く澄んだ声に慌てて顔をあげる。
「あ、あの……ご、ごめんなさい!!!」
目の前には水の滴る男子生徒。
その男子生徒の顔を確認した私の顔は一瞬で青ざめる。
こうなりゃ、さっきまでの暑さはどのへやら。
一瞬で血の気が引いていくのが分かる。