クールすぎる藤堂くんが本気になるなんて!?
このエセ王子。
どこがクール王子だ。
ただの性格悪いどこぞのワガママ御曹司じゃんか。
だから嫌なんだ。
このルックスでお金にまで恵まれて、苦労を知らず温室でぬくぬく育って来たような王子様は!
スーパーの特売日に早朝駆り出されてみろ!
バーゲンセールで敗北したママの心のケアしてみろ!!
バイトでサービス残業という名のボランティアしてみろ!!!
『天は二物を与えず』なんてのは、この世で1番信用ならない言葉ですよ。
……とは言え。
グッと堪えろ、杏。
「本当に本当にごめんね!
あの、なんてお詫びしていいか……
そうだ!クリーニング代払うよ」
"ちょっと待ってて"と、びしょ濡れ王子に背を向けて教室へと財布を取りに戻ろうとした私は、
───グイッ
王子の冷たい手によって、いとも簡単に元の位置に引き戻され、あろうことか再び王子と向かいあう形になってしまった。
「バカなやつ」
「は?」
「そんな必死になって謝んのは、
俺が藤堂財閥の息子だから?」
フッとバカにしたような笑みを浮かべながら、私を真っ直ぐ見下ろす藤堂くんは、ムカつくくらいかっこいい。
普通の女の子なら、この瞬間 ときめきレボリューションなのかもしれない。
だけど、私は。