クールすぎる藤堂くんが本気になるなんて!?
名前とクラス……連絡先?
ちょっと待ってよ。
それもう完全にあれじゃん、私の身元確認じゃん。
ここで素性調べられたら?
子会社でパパが働いてるってバレたらどうなる?
パパはリストラ……?
佐倉家はやっぱり路頭に迷うの??
嘘でしょ、冷静になってよ王子様。
たかが水だよ?
ちょっと、ふらついてぶちまけちゃったんだよ?
そりゃ雑巾入りだったけど……
しかも使い終わった後の雑巾だったけど!
「あの、冷静に」
「お前のことが欲しくなった。
これから毎日 会いに行く」
…………え?
今なんて言いました?
「欲しくなった……とは?」
「まんまの意味だろ」
いや、待ってね。
今、全然 頭が働かないから。
あれか、お金持ちは話す言葉も違うのか!?
それか、あれだ!これは全部夢だ。
だから、さっきから有り得ないことが有り得て……
「2年5組、藤堂飛鳥。これからよろしく」
そんなずぶ濡れで挨拶されても……。
目の前の藤堂くんは至って真面目で、とてもふざけてるようには見えない。
自分の手の甲を反対の手で思いっきりつまんでみたけれど、もちろん顔を顰めるレベルで痛かった。
「2年2組……佐倉杏。あの……どうか見逃してください」
これはどうやら夢なんかじゃないらしい。