オオカミ弁護士の餌食になりました
驚いて振り向くと、ダークスーツに身を包んだ長身の男が立っている。
商社マンと同じく、いや、それ以上の『できる男』のオーラを放ち、目鼻立ちのくっきりとした顔に穏やかそうな笑みを浮かべるその人は――。
「香坂(こうさか)、さん?」
「悪い。待たせたな」
にこやかに言って、彼は商社マンに目を留める。
「そちらは?」
自分よりもハイスペックな外見の男が現れて気後れしたのか、商社マンは一歩後ずさった。
「な、なんだよあんた」
尾を丸めた犬のようになっている商社マンに、香坂さんは余裕たっぷりに微笑んで、私の腕を優しく取る。
「俺は彼女の大切な存在ですが、あなたは?」