オオカミ弁護士の餌食になりました

 昼休み直前、経営幹部との打ち合わせを終えて戻ってきた香坂さんを、データルームの前で捕まえた。

「先生、マネジメント・インタビューのリストです。先方には連絡してありますので」

 書類を差し出すと、彼はわずかに目元を緩めて「助かるよ」と受け取る。そのまま真っ白なガラスに覆われた部屋のドアを開け、中に入っていった。

 データルームは基本的に立ち入り禁止だ。

 私は香坂さんの手伝いをするから入室が許可されているものの、パソコン作業など基本的な業務はデータルームに背を向ける形で自分のデスクで行っている。

 午後十二時になり、同僚たちが立ち上がって各々昼食をとりに行く。


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