オオカミ弁護士の餌食になりました
柔らかな橙色のフットスタンドライトに照らされた木のベンチに腰を下ろした途端、体の力が抜けた。
全身に広がっていた鳥肌も、ここまで歩くうちにおさまっていた。
レインボータワーのエントランスアプローチは、等間隔で立木が植えられベンチまで設置されていて、ちょっとした公園のようになっている。
陽気のいい昼時には、ここでランチをとりたい人たちによるベンチ争奪戦が繰り広げられているらしい。
「君も大変だね。美人て言われたり、ブスと呼ばれたり」
私の正面に立ったままで苦笑する彼、香坂千暁(ちあき)さんには、雰囲気たっぷりの間接照明がよく似合っていた。
橙色の光に浮かび上がった彼は、私の四歳年上で今年三十歳になる。そのせいかそれとも照明のせいか、以前会ったときよりもずっと落ち着いて見えた。