オオカミ弁護士の餌食になりました
そう言うと、テーブルに並べられたふたり分の食事もカメラに収める。
「ひとまず、彼女が作ってくれた夕飯」
いたずらっぽく笑って、香坂さんは携帯を置いた。
彼女、という言葉に甘美な響きを覚えながら、私は自分に言い聞かせるように目を伏せる。
彼女といったって、恋人ごっこをしているだけの、偽物の関係だ。
香坂さんは、両親からの「結婚しろ」という催促を嘘の彼女を立てることでかわそうとしている。
それはつまり、実際に結婚を考えている女性はいないということで、忙しい彼は、今は誰とも付き合う気がないということなのだろう。
ちくりと胸に痛みが走るのを感じながら、私は大学生の頃に戻ったような無邪気な顔で食事をしている香坂さんの幸せそうな顔を、ただぼんやり見つめていた。