オオカミ弁護士の餌食になりました

 食事を終えて洗い物をしていると、空いた食器をシンクに運んでいた香坂さんが、何かを思いついたようにニヤリと笑って私の後ろに回り込んだ。

「……なにしてるんですか」

「新婚ごっこ?」

 笑いながら言って、後ろから私をぎゅっと抱きしめる。背中に感じる体温に、問答無用で心臓の音が高くなった。

「ちょっと、やめてください!」

 胸の鼓動が全身に伝わったように腕まで震えそうで、私は洗い物の手を止めた。

 香坂さんが後ろから私の顔を覗き込む。

「どうした? 後ろからだと怖い?」


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