オオカミ弁護士の餌食になりました

「……そうじゃなくて」

 後ろから抱きしめられるってすごい、と思った。

 びっくりするくらいの安心感に戸惑う。

 大きな体に後ろから包み込まれると、自分は愛されている、と勘違いしそうになる。

 そんなふうに思ってしまう自意識過剰な自分が、たまらなく滑稽に思えた。

「なんだか、恥ずかしい、ので」

 本当に恥ずかしいのは自分自身のうぬぼれだけれど、私がそう口にした途端、彼はますます強く抱きしめてきた。

「こ、香坂さん、ちょっと」

 振り向いた瞬間、唇を塞がれる。

 いきなりのキスに、私は持っていた泡だらけのスポンジを落とした。


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