オオカミ弁護士の餌食になりました
「有村、ちょっと」
給湯室に向かおうとしたら、ぽつぽつと人が残っているフロアの奥から、宮田が小走りで駆けてきた。
外出先から戻ってきたところなのか、普段社内では脱いでいるジャケットとネクタイを身に着けている。
「よかった、まだいた」
「どうかしたの?」
ほっとしている顔を見て、なにかトラブルでも起きたのだろうかと思っていると、彼は周囲を見回してから、「ちょっと来て」と歩き出した。
連れてこられたのは、同じフロアにある資料倉庫だった。入口脇のスイッチを押して電気を点けると、私を振り返る。
「あのさ、確認なんだけど」
少し焦ったような口調で言う宮田に、私も何事だろうと息を呑む。