オオカミ弁護士の餌食になりました
強く掴まれたこともそうだけど、不意を衝かれたこともよくなかったのだろう。
はるか昔の記憶が一瞬だけフラッシュバックしたせいで、拒絶反応が強く出てしまった気がする。
記憶といってもほとんど覚えていないけれど、私は小学二年生のとき、連れ去られそうになったことがあるらしい。
ひとりで学校から帰っている途中、知らないおじさんに腕を掴まれ無理やり引っ張られて車に乗せられそうになったのだとか。
そのとき助けてくれたのは、私の後ろから同じ通学路を帰ってきていた四歳年上の兄、有村海斗(ありむらかいと)だった。
記憶はないけれど、掴まれた腕の痛みと怖かったという気持ちだけは印象に残っていて、それはふとした瞬間によみがえり私の体に拒絶反応を起こさせる。