オオカミ弁護士の餌食になりました
彼らがいるあいだ、私はほとんど二階の自室に閉じこもっていたけれど、やっぱりふとした瞬間に顔を合わせる機会はあった。
「ただ見た目がいいだけだったら、確かにかわいいな、という印象だけで終わっていたと思う。でも君は……」
香坂さんはショートカクテルのステムを握る私に、そっと視線を向ける。
「海斗と、裏で言い合いしてた」
「……」
なんだか嫌な予感がしてくる。
「トイレを借りに廊下に出たときだったかな。洗面所のほうで声がして、覗いてみたら、君と海斗が言い争いをしてたんだ」
香坂さんは右手の甲で口もとを隠した。まるで、真剣な話の最中に噴き出さないよう、予防でもするみたいに。