オオカミ弁護士の餌食になりました
「俺らが居間でうるさくしたから、真凛ちゃんがキレたのかと思って、よくよく話を聞いてみたら……洗濯物のなかから出てきた五百円玉が、いったいどっちのものなのかっていうのを、いつもみたいな調子で激しく言い合ってて」
そこまで言って、彼はこらえきれないというように噴き出した。くっくと肩を震わせている香坂さんを見て、私はいたたまれなくなる。
兄とそんなくだらないことで言い争っていたところを目撃されていたなんて……死にたい。
「しかも、あの灰汁の強い海斗に負けず劣らずの調子で言い返してるから、この子はただの美少女じゃないなって、強烈に印象に残った」
顔がいろんな意味で熱くなった。
「なんかもう、本当、ごめんなさい」
つい謝ってしまう。香坂さんは目を上げて、優しく笑った。