オオカミ弁護士の餌食になりました

 勉強の甲斐あって無事に司法試験を突破し、司法修習を経て弁護士になると、香坂さんは途端に忙しくなった。それこそ恋をする暇もなく働いて、私のことも次第に忘れていった。

 そして去年、私たちはオフィスで再会した。

「本当にびっくりしたよ。まさか仕事で行った会社に真凛ちゃんがいるなんてね」

 呼び方が昔のものに戻っていて、胸がくすぐられる。

 やたらと色気をふりまくようになったけれど、彼は大学生のときと変わらない、優しくて誠実な瞳を持っている。

 そこに私を映し、優しく笑う。

「とびきり美人になってるのに、まだ男に触れないなんてさ。そんなのもう、俺がもらってやるから! って思うだろ。だから海斗に言ったんだよ」

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